日々の活動

2010―2013のセミナー

健康なまちづくり 第1回~第12回

第12回 「建築は文化」 2011.8.5

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会場:曳家の工事現場(岡崎市内)

家屋をそのまま移動させる曳家工事の見学とお施主様のお話を伺いました。

曳家の対象となるのは昭和元年(1926年)に先々代が建てた築造された茶室。河川拡幅工事に伴う土地収用により、解体しなければならない状況になった施主のNさんは、祖父の代から使ってきた茶室なんとかそのまま残せないかと思案した末、曳家を決意されました。移動後には茶室のまわりに庭を造り直し、茶室からの眺めを楽しみたいと話されました。

「建物が先にありき」となりがちな建築業界ですが、長く使って来た家屋という空間を残したいという施主の思いこそが、建築という文化を底辺で支えているのだということが感じられました。

12回シリーズの締めくくりとして有意義なセミナーでした。

第11回 「自然エネルギーによる家づくり その3」 2011.6.23

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講師:小玉 祐一郎氏(神戸芸術工科大学教授) 会場:葵丘

講師の小玉氏はパッシブデザインを1980年代から始められ、日本ではその第一人者。また、建設省において国家的なプロジェクトにも関わってこられ、現在は大学において建築の未来を学生と共に模索されている。

講演では、東日本大震災を契機にエネルギー利用の在り方そのものの転換にあると指摘されました。そして、身体的な心地よさをキーワードにパッシブデザインを説明。寒冷地域と温暖地域でその手法の違いについて話されました。寒冷地の北欧で発達した遮蔽型のシステムは必ずしも日本の風土に合うものではない。むしろバリ島などに見られる開放的は手法が日本に適合し、日本の数寄屋建築にもさまざまなヒントがあるという。

広い視野と深い知見に支えられた話に、パッシブデザインが開く建築の未来を垣間見た思いでした。

 

第10回 「木 その2」  2011.03.23

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講師:杉本 洋文氏(東海大学教授) 会場:葵丘

講師は東海大学の杉本洋文氏。2010年には平城遷都1300年祭のプロデューサーを務めるなど、木造の大規模建築において様々なプロジェクトを実現されています。また今回の震災についても復興に向けた構想を早くも進められています。

講演では日本の森林資源の利用促進には、各地域の山でその時々に取れる材料をいかに使いこなすのかが大切だと話されました。特に小径木の利用はどの地域にも共通している課題ということで、杉本氏が試みた90mm角の材料を多用して作った住宅はデザイン性と相俟ってとても魅力的な空間に感じました。また、日本全国の大規模木造建築を紹介され、音響機能と構造を一体化した設計の音楽ホールの事例は、参加者から実際に見てみたいとの意見が出ました。

木材という素材と向き合い、新しい技法から創造された新たな空間表現はとても豊かで、木材の可能性を感じました。

 

第9回 「石」  2011.02.22

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講師:畔柳 秀幸氏(額田石材代表取締役) 会場:葵丘

岡崎で花崗石(みかげいし)を切り出すのを代々家業としてきた講師の畔柳氏。講演では、採石場のことや、河川工事、アーティストとの空間づくり、猪垣の修復など多岐に亘って話されました。 予算や工期に厳しい現代、現場の要望に応えるように新しい施工方法が出てくる一方で、伝統的な技術が忘れられてきている。職人の手仕事が廃れてしまうことに危機感を持たれ、昔の城の石垣の技法である穴太積(あのうづみ)を手本として研究され、他県での城址の修復活動にも参加されています。そうした姿勢に、なんとか職人の技術を次の世代に残したいという講師の熱い想いを感じました。

 

第8回 「木」 2010.12.09

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講師:樋口 奈央氏(岡崎森林組合)小原淳(EWE代表) 会場:葵丘

講師の樋口氏は北海道出身。樹木医や造園に興味があって大学で学び、卒業後、岡崎森林組合に就職。北海道から遊びに来たお母さんに岡崎は「谷間みたいなところ」と言われたそうです。いつも屈託のない笑顔の樋口氏に、林業の現状について講演いただきました。

「岡崎の人工林も3割くらいは手がいき届かず荒廃している。価格の折り合いがつかず売るに売れない。」と、樋口氏。会場からは建築家の「地元の杉・桧を使った家を設計しても、材料が入手が難しい。」という意見のほか、山主の方の発言などもあり、林業が抱える問題の複雑さを感じました。

当NPO代表の小原も講師を務め、「天使の森」プロジェクトとシリーズ講演「健康な街づくり」の意図やその背景について話しました。また、社長を務める建設会社の事例で、県産材100%の住宅を紹介しました。

 

第7回 「土」 2010.11.11

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講師:丸山 欣也氏、久住 有生氏 会場:葵丘

「健康な街づくり」シリーズ初めての2人の講師しよる講演会です。

丸山氏は、常に何かをするときにはスケッチから始める。そんなスタイルを続けられて46年、貯まったスケッチブックは200冊を超えるそうです。講演でもまずはスケッチの話から・・・建設(ビルド)と破壊(スクラップ)の中間に建築がある。常に手を入れ続けることによって建築が存在し続けられる。失敗の中に発見があり、あたらな可能性を見出すきっかけが生まれる。土や木をはじめ様々な素材を使った海外や国内でのワークショップの例を数多く引きながら、思索に富む内容でした。

久住氏にとって、いろんな仕事がある中で一番面白いのは数寄屋造りの仕事。一つの空間づくりで、いろんな職人が力を出し、主張しあって空間が出来上がってくるのだけれど、良い空間は仕上がった瞬間にどの人も主張し過ぎることなく絶妙な調和が生まれるのだそうです。「名を残すな、仕事を残せ。」と職人気質の久住氏。そうした職人気質が、返って土の仕事がだんだんと忘れられてしまってきている遠因と考えている。講演では、昔から続けられてきた土の空間づくりについて土のこと、技法のことを話されました。例えば、茶室を造るときは、施主の持つ茶道具を観てから空間の意匠を始めること。必要であれば3年寝かした土を使うこと。床柱の意趣や形状に合わせて壁を微妙に造作しながら塗ることなど。また、伝統的な仕事だけにとどまらず、現代の大規模建築の事例も紹介され、土の表現の広さを感じました。

自然の形に魅かれ、造形する2人の話は深く、時間でピリオドを打つには惜しい講演会となりました。

 

第6回 「和紙」  2010.10.19

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講師:杉原 吉直氏 会場:葵丘

和紙の歴史や素材の特性、国内外の様々な施工事例を知ることができ、和紙の可能性について多くの示唆を受けました。また講演後の和紙に触れながらの語らいからもいろいろな発見がありました。

 

第5回 「家づくり庭づくり」 2010.08.31

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講師:糟谷 護氏 会場:葵丘

庭を自然に近づける「雑木林のような庭」を作るためにバードバスや実のなる木を配する手法を紹介。植生と遷移までを考慮した庭づくりの奥深さを知りました。

 

第4回 「自然エネルギーによる家づくり その2」 2010.07.27

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講師:白瀬 哲夫氏 会場:葵丘

都心でエアコンなしの住宅でも窓の配置等で快適な住環境が実現できるという調査例、実験装置を使った風の通り抜けの検証ビデオなど、具体的で分かりやすい内容で、窓の設計の重要性を実感できました。

 

第3回 「自然エネルギーによる家づくり」 2010.06.24

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講師:井山 武司氏 会場:葵丘

自然エネルギーをパッシブに利用することが持続可能で快適な住環境を実現する1つの解である。日照時間が少ない山形県でゼロエネルギー住宅を実現した井山氏の話に、自然エネルギー利用の大切さをあらためて感じました。

 

第2回 「伝統構法に学ぶ家づくり」  2010.05.12

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講師:宇野 勇治氏 会場:葵丘

地域の木材を使うことの大切さを知り、また、土壁や無垢材が持つ室温や湿度の調整機能を検証データにより捉え直すことができ、伝統的な家づくりの良さについて理解を深めることができました。

 

第1回 「オリエンテーション」  2010.04.19

会場:愛知県岡崎市・カフェ

生命の源となる水と産業資源である森にスポットを充てる「天使の森」プロジェクトの一環として、生産者である「森」と消費者である「街」のこれからの在り方を建築の視点で考える機会となるセミナー「健康な街づくり」が始まりました。

今回はオリエンテーションということで、市民有志が集まり、これからの岡崎について意見交換をしました。三河地域の海の幸・山の幸を食しながら、里山に住む人、街に住む人、参加者がそれぞれの視点から街の文化や未来について語る有意義なひととときでした。